射逆 裕二『殺してしまえば判らない』

殺してしまえば判らない

殺してしまえば判らない

1年前、首藤の妻彩理は東伊豆の自宅で自ら首を刺し血塗れとなって死んでいた。その死は自殺として処理され、首藤は失意のあまり東伊豆を離れるが、納得がいかない首藤は、妻の死の真相を突き止めようと決意し、再び東伊豆に戻る。馴染みのレストランで首藤は奇怪な女装マニアの男・狐久保に出会う。見かけによらず頭脳明晰・観察力抜群な狐久保の活躍で、ついに妻の死の真相に辿りついたのだが・・・。


第24回横溝賞を受賞した作家さんで、受賞作は思いのほか面白かったのですが、これはダメだー。前作は細部まで丁寧に練られ、全ての疑問点に納得できる答えが用意されていてかなりの好感触だったのですが、今作はストーリーよりもシリーズ化前提で作られた(するつもりだと思いますが・・・)女装マニアの探偵に気を取られたんだか、話のテンポが悪い上に話そのものもつまらない。おまけに肝心の探偵にも魅力を感じない。せっかく女装マニアにしてるんだったらそれを生かすような謎でもコメディでもいいけど、なんらかの要素を用意してくれないと。単に女装好きの探偵ですと言われても、あーそうですか、ぐらいの感想しか持てません。
この狐久保という男の情報として過去の職業ぐらいしか言及がなくて、何故その職業を辞め現在は女装をしてるのか?これもまた人物設定だけは変わってる一緒にいる女性とはどういう関係なのか?そういうことは全く描かれず、続くのだとすればシリーズ中で明かされるという趣向なのかもしれませんが、今のところ知りたーい!と思うような魅力が全くないもんで、出オチですか?という感じ。
妻の死の真相も、なんか消化不良。それなりに伏線は張られているし分からないでもないんだけど、妻の死に関わった人物の行動と感情がちぐはぐだからなのかなぁ・・・どうもスッキリしない。探偵と主人公以外の登場人物達が書きっぱなしなのもスッキリしない。探偵の能力を知らしめる為に小さいながらも複数の事件を必要としたのであれば、それぞれ独立した物語にして連作短編集という形にすればこれほど散漫な印象を受けなかったんじゃないかなと思う。
続きがあったらきっと読むとは思うけど、探偵役の紹介が終わった次こそは内容で勝負して欲しい。