恩田 陸『チョコレートコスモス』

チョコレートコスモス

恩田陸版ガラスの仮面（序章）といったところですかね。演じることにおいて天才的センスと動物的なカンを持つ少女と、芸能人一家に生まれ、若くして天才と呼ばれ圧倒的な人気を誇る女優が、伝説的プロデューサーが20年ぶりに作る舞台を目指す･･･ちょっと違うけど、でもまぁそういう感じの物語です。
主人公の少女を福田麻由子ちゃん、人気女優を松たか子、その親戚を寺島しのぶ姉さんで読みました。半分ぐらいが作中劇というか演技の描写でして、それが面白くない。熱気や躍動感が伝わってこないもんで、天才少女のその特異性が感じられない。やっぱり舞台の迫力だったり高揚感だったり、圧倒的な力みたいなものを文字で表すのって難しいんだろうな。舞台をよく見る人であれば想像する楽しみがあるのかもしれないけど、それほど見るわけでもない私レベルでは無理。登場人物の誰かに感情移入できるわけでもなく、観客の目として楽しめるようなものでもなかった。天才少女が所属する劇団員たちや、天才女優の親戚でありライバルでもある現在昇り調子の女優などいかようにも動かせる人物がいるのに、中途半端な扱いで終わってしまっていて、物語として横への広がりがほとんどなく、小説としての面白味もない。タイトルと内容の繋がりもこじつけっぽいし、まぁ作者の趣味に付き合ったという感じ。
なんかこれ、中途半端に映像化しそうな気がするんですけど。