戸梶 圭太『宇宙で一番優しい惑星』

宇宙で一番優しい惑星

宇宙で一番優しい惑星

銀河系に地球が誕生し、地球人が殺し合いを始めるよりはるか昔の物語。

ということで。面積の10分の7が生物の棲めない泥の海で覆われた惑星オルヘゴには、最も海抜が低く、知性も生活レベルも低い国ダスーン、中くらいの国ボボリ、そして高貴にして耽美な御国クイーグという3つの国が存在している。ダスーン国内ではアテ族とホコ族という二つの民族闘争が絶えず、まともな生活が送れない国民はボボリやクイーグに出稼ぎに出て、過酷な職業に就かされている。クイーグとダスーンの間に国交はなく、二国を結ぶのはボボリの組織で、ボボリはクイーグ・ダスーン両国と適度な距離を保ちつつ事なかれ主義を貫いている。
これを読んで思いました。戸梶を教科書で取り上げればいいと思う。これほど分かりやすく戦争を描いた物語ってないと思う。いや、マジで。戦争という行為に至るプロセス、各国の思想や思惑、その馬鹿馬鹿しさ。そして戦争がなくならない理由。そういった諸々を頭で考えるのではなく心で感じるとというかですね、なんかダイレクトに入ってきた。いつものように登場人物全員アホで激安なんだけど、だからこそ戦争の愚かさを感じました。
この本と並行して福井晴敏の新作を読んでいるのですが、「もはや軍隊と軍隊が戦略上の拠点でぶつかって血を流す戦争ではなく、狙ったところに最小限の人数で攻撃し(自爆含む)、最大限の攻撃を与える。多少一般人を巻き込んでもそれは仕方のないことで尊い犠牲である。それが新しい戦争のメソッド、現代の戦争である」ネタ被ってるやん!とビックリ。表現する言葉は同じ国の言葉だとは思えないほどかけ離れてますが、言ってることは同じじゃないかと。戸梶と福井。同じ歳の二人が期せずして同時期に発表したこういう物語を自分が読んだということに、なんだか運命を感じました。自分(の国)だけは大丈夫だなんて思える時代は終わったんだ。
って戸梶の感想文なのに何書いちゃってんの私。