松尾 スズキ『クワイエットルームにようこそ』

クワイエットルームにようこそ

クワイエットルームにようこそ

ゲロでうがいをする夢から覚めたら、わたしは身体を3点拘束されていた。同居人と大喧嘩しオーバードーズでぶっ倒れるという最高にめんどくさい女の、絶望と再生の14日間 in 閉鎖病棟


発売直後に購入したものの、帯を見てそれほど調子がよくない時に読むとドヨヨ〜ンとしてしまうのではないか・・・となんとなく読むのを躊躇っていた1冊。

主人公の明日香は、ついさっきまでは正常側にいた人間。なのに同居人と大喧嘩したというつまんないことが引き金で、強制的に正常ではない側に仲間入りすることになる。事情が飲み込めない明日香は「すいませーん!」と助けを求めるが、返ってきたのは「頭があああああ!」という雄たけび・・・。怖ぇーよー。目が覚めてそんなところに一人ぼっち、しかも拘束具付き!これ以上ない恐怖だわ。
隔離されたその空間には頭があああ!と叫びながら自分の頭を燃やす女や体重が26キロしかない摂食障害の女の子や鬱病リスカ、アル中、そしてODとそれぞれ症状が違う人たちが、ほんの少しの自由を与えられ、そして一律に管理されている。普通と普通じゃない境界線上にいるような明日香は、そんな中でそんな人達と関わりあい自分を見つめ直しながら、ある入院患者のジグソーパズルを患者達と共に完成させる。みんな多かれ少なかれ人に迷惑をかけた上でこの場所にいるわけだけれど、ジグソーパズルを作っている間は誰にも迷惑をかけないし、かといって世の中の何の役に立つわけでもない。みんな同じ。次の日の朝、約束を守ったサエちゃんにはマジで泣きそうでした。すごくいいエピソードなのに、サラっと書き流す松尾スズキが大好きです。
ほんの少しのキッカケで自分の気持ちなんて良くも悪くもできる(なる)わけで、この物語に登場するような人達と今現在は正常だと思ってる自分との差なんて、それほどあるわけじゃないんだよな。