池井戸 潤『シャイロックの子供たち』

シャイロックの子供たち

シャイロックの子供たち

東京の下町にある第一銀行長原支店で、出世や家族の為に日々奮闘する行員たち。どこにでもある1支店は、現金紛失事件を発端に1人の行員が失踪し、歯車が狂い始める。


銀行の1支店で働く様々な立場の人物の視点による連作短編集。前半はそれぞれの日常を通して銀行業界を描きつつ、現金紛失事件というそれほど大きくもない事件として種をまき、後半はそれがぐんぐんと成長しやがて大きな事件となるという形。
銀行業界のノルマの厳しさや人間関係を含めた職場環境の厳しさは想像に難くないわけですが、元銀行員の著者によるこの本を読むと改めて激務なんだろうなぁと思うわけです。小説なりに肉付けはされているのだろうけど、決して大げさではないというか、実際こういう世界なんだろうなぁと。でも感想としてはそこまで。業界モノとしてならそれなりに面白いのですが、六話以降は中途半端なミステリーになりまして、金融ミステリーなのかと思うとそうでもなさそうで、緊迫感は全くなく、肝心なところがボカされていて謎解きというか手口も全然分からないし、事件のキーパーソンになる男のこともよく分からないままだし、結局のところ何をどうやったわけ?これで終わり?という感じ。
前半は「シャイロックの子供たち」ってタイトルらしかったんだけど、すっごい尻つぼみ。こんなことならミステリー仕立てにしなきゃいいのに。