『野ブタ。をプロデュース』第9話

あれだけ引っ張り倒しといて、黒幕ネタの幕引きは拍子抜けってぐらいアッサリだった。夢落ちかよ・・・。でもま、これを唐突にやられていたら憤慨したところだけど、初回からこれに至る伏線(こういう結末にすると当初から想定してたかどうかは分からないけど)というか、この種の描写はあったし、アリかな・・・という気分。

見ていてなんだか気分が悪かったのは、蒼井の気持ちが分かる気がするからだと思う。要するに、蒼井は友達が欲しいだけなんだよね。それと、女ならではの嫉妬心。修二に対してシンパシーともしかしたらほんのちょっとの恋心みたいなものを感じていて、人気者修二の本当の顔をあたしだけが知ってるって思うことで、心のバランスを保ってたんじゃないかな。まり子の存在も疎ましかっただろうけど、いくらなんでも太刀打ちできないし、もしかしたら修二がまり子を好きではないことも気がついてたのかもしれない。そんな時に、転校してきた“明らかに自分より劣る女”が、どんどんと修二(と彰)と仲良くなっていくのを見て面白くない。本当は自分もその中に入りたいくせに入れない。ならば逆にあの関係をぶち壊してやる!という方向に向かってしまった。自分の一存で3人の関係なんていつでも壊せる、あたしが全てを操ってると思いながら過ごす日々は、きっと充実してただろう。でも、1つ1つのハードルをクリアされるたびに、もっと酷い目に合わせてやろうとどんどんとレベルアップする邪悪な自分が「取り返しのつかない場所」へ向かっていることも分かっていて、心のどこかではこんなはずじゃなかった、こんなつもりじゃなかったと思っていたんじゃないだろうか。今更引き返せない自分を止めてほしいと思ってたんじゃないだろうか。化粧ポーチに付いていたペンキぐらい、いくらでもごまかせたはずだもん。あの時学校中が制服にペンキで落書きするの流行ってたし、その時付いたって言えばいいだけだもん。「小谷さんを自殺まで追い込もうと思う」とまで言ってのけた女にしては、あのタイミングでバラすのはそれほど効果的ではない。きっともう限界だったんだと思う。そして最後まで素直になれない蒼井は「許してくれなきゃ飛び降りる」と野ブタを試す。これまである意味ずーっと修二を通して野ブタを見てきた蒼井は、野ブタがこんな場面においてでも「許す」といわないことは想定してたと思う。きっと蒼井は自分が誰からも必要とされていないと思い、自分の存在価値に疑問を抱いてたんだよな。野ブタがもし「許す」と言ってくれたとしても信じなかっただろうし、結局「嫌な思い出でもいいから、私がいたことを覚えてて欲しい」ってことなんだよね。すっごい強烈。寂しがりやの極み。素直じゃないにも程がある。でも、分かる。すごーく、分かる気がする。修二でも野ブタでも彰でもなく、一番蒼井に近いような気がする自分がすごくやだ。

そんな蒼井と似たもの同士だったはずの修二は、学校に来れなくなった野ブタの為に、クラスメイトの前で頭を下げる。これまで心の中で蔑んでいたクラスメイトに対して、しかも現在無視され中・・・相当勇気がいったことだろうな。「今、俺が言ってる言葉が、みんなに届いてないと思うと、怖いです。死ぬほど怖いです。」自分の言葉が届かなかった本当の理由を、修二はしっかり理解してた。そして、本気で、心から野ブタの為にお願いをする修二の言葉に対して、真っ先に「大丈夫、届いてるよ。」とタニが答えてくれた。タニごめん。お前はいいヤツだ。タニが修二に答えたことで、そもそも流されて修二を無視してたクラスメイト達はアッサリ修二を受け入れ、もれなく彰まで受け入れました・・・。ちょっと皮肉。元通りとはいかないけれど、クラスメイトから話しかけられるようになった修二は、もう一回やり直そうかなと言う。逃げるのではなく、あのクラスでもう一回、桐谷修二を作りあげていこうかなと言う。失った信頼を取り戻すのは容易ではない。それでも次の場所に行ってではなくて、もう一度この場所でやり直そうと思える修二は、“ちゃんとした人間”に一歩近づいたんだ。

・・・せっかく修二がそう思ったところなのに、やっぱり転校させますか・・・。3人の絆を確認する最終回になるんだろうけど、まり子!まり子にいい目を見せてあげて欲しい。今回のMVPは何と言ってもまり子ですよ。お前はホントにいい娘だ。いつか修二が人を好きになることが出来たとき、まり子の素敵さに気付いて後悔しまくると思うよ。逃した魚は大きいというけれど、まり子は大間のマグロ並みだもん。