朱川 湊人『かたみ歌』

かたみ歌

かたみ歌

戦争の空襲も免れた東京の下町、三百メートルほどの道に様々な店がずらりと並ぶアカシア商店街。ラーメン屋、スナック、酒屋、そして古本屋の片隅で、ちょっと不思議な出来事が起こる。

直木賞受賞第一作。ノスタルジックでちょっと不思議な雰囲気は受賞作の「花まんま」同様ですが、こっちは同じ下町でも東京が舞台のせいか、ちょっと垢抜けた感じです。下町の商店街を舞台に、7つの話が収録されているのですが、いわゆるよみがえりモノばかりでして、またこれか・・・という気分。朱川湊人らしい昭和の香りで包まれているので、雰囲気に釣られそうになるのですが、よくよく読めば死者と生者がお互いを思うというありがちな話なんだよな。しかも今作は、それぞれの話の中で懐メロをテーマ曲のような形で登場させていて、ノスタルジー具合が安易だなぁ・・・と思ってしまいました。でもどれもいい話なんだけどね。特に「栞の恋」と「ひかり猫」はありがちだと思いつつもホロっとしてしまう。
「都市伝説セピア」よりも「花まんま」やこの本の方が万人受けするんだろうけど、「都市〜」のような話は朱川湊人にしか書けないと思うわけで、同じよみがえりモノでもホラー寄りのものが読みたいなーと思う。