横山 秀夫『震度0』

震度0

震度0

阪神大震災が起きたその日、700km離れたN県警本部警務課長が失踪した。県警事情に精通し、人望も厚い人物の失踪に、県警幹部の利害と思惑、保身と野心が錯綜する。


事件に関わる複数の人物により頻繁に視点が切り替わり、あらゆる方向から事件を描き、その中でエゴや欲が渦巻くという横山秀夫お得意のパターン。ちょっと特徴を挙げるとすれば、それが「情報戦」であるということ。読み応えはあったんだけど、阪神大震災との関わりがどうもピンとこない。いや、意図してることは分かったと思ってるんだけど、なんかこう、阪神大震災に釣られたような気分がするんだよな。
警察好きの私としては、現場の警察官たちが手柄(犯人逮捕)を挙げるために野心むき出しで争うっていうのなら大歓迎なんだけど、これは現場は単なる手足でしかなくて、争ってる奴らはほんと自分のことしか考えてなくて、腹立たしい気分。特に生活安全部長はなんだありゃ。まぁこれがリアリティというか、警察に限らずというか警察も同様というか、勝ち上がるためには相手を蹴落とし、上の命令には従うしかないという社会の縮図なんだけど。
今作には、各幹部たちの妻も多く登場するのですが、横山秀夫は女書くの下手だよなぁと改めて思った。女の場面になると、たちまち密度が薄く、テンポも悪くなるんだよね。しかもソバージュて・・・。阪神大震災の頃にはソバージュなんて既に廃れてた気がするんだけど。