吉村 萬壱『バースト・ゾーン』

バースト・ゾーン―爆裂地区

バースト・ゾーン―爆裂地区

国中で勃発するテロ活動。テロリストはテロリンと呼ばれ、少しでもテロリンらしき行動を取る人間は民衆によってぶち殺される。国はテロリン抹殺のため志願兵を募り、最終兵器「神充」を求め志願兵を大陸へ送り込む。肉体労働者の椹木は病気の妻子の為、椹木の愛人寛子は椹木を追って、素人画家の井筒は寛子を追って、麻薬密売人の土門は刑罰によって、医者の斎藤は国の命令によって、それぞれ「神充」が存在するという「地区」へ向かう。

うわー・・・救いねー。読む前に想像してた物語とはぜんっぜん違う。リンチレイプ殺戮祭り。とにかくどん底。極限状態に置かれた人々の「思い」は死につながり、異形の怪物の存在の影にはそれと同様、あるいはそれ以上の人間のエゴがある。どうしようもない終末を目前にし、人間として何かを「思う」ことの意味を問う・・・。うーんなんか違うなぁ。
「意思」と「欲」の物語だなぁと思った。生死を左右する場面で、もう死んだ方が全然マシなんだけど!という状況で、それでも何かを「思う」。「思う」ことが人間なのか。「思う」ことを放棄するために殺戮を行う人間は人間ではないのか。そもそも「思う」とはなんなのか。立ち位置が曖昧になる感じがした。そしてこの話は答えを教えてはくれない。