小路 幸也『HEARTBEAT』

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

HEARTBEAT (ミステリ・フロンティア)

優等生と不良少女が高校時代にひっそりと育んだ恋。二人は10年後、少女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、二人で見つけた秘密のあるものを、彼女にあげると約束した。そして10年が過ぎ、約束の日がやってきた。優等生は、NYの暗闇から抜け出し日本へ戻りその場所へ行くが、彼女はこなかった。何とかして約束を果たしたい優等生は、かつての同級生、巡矢を思い出し協力を仰ぐ。一方、旧財閥の直系跡継ぎである裕理の家では、幽霊騒ぎが起こる。裕理とその友達は、不自然な幽霊騒動の謎を探ろうとする。やがて交わる二つの物語。それは、約束と再会の物語。
この人ドリカム編成好きだなー。しかも今回はダブル。そうそうあるシチュエーションでもないと思うんだけどお話だし、上手くいかない人間関係というか、報われない想いや一歩踏み出したら壊れてしまいそうな脆く儚い空気を演出するには好都合だし、特にこの物語では、よーく考えてみると昼ドラじゃね?な設定の生々しさを上手く薄めてると思った。人物配置が上手いんだな、きっと。
ミステリ・フロンティアでの刊行なので、当然ミステリのつもりで読んだのですが、二つの物語どちらの謎も、どうも歯切れが悪い。このぼんやりとした感覚は、最終的にはラストの衝撃(というほどのものでもないけれど)に収れんしていくものなので、確信犯的なのかもしれないけれど。読み終わった後すぐそういう物語だと分かった上でパラパラと読み返してみたのですが、やっぱりあんまりピンとこなかった。むしろいくつか、この場面はどういうことなの?って「?」が解消されないまま。ミステリとして読むと不満が残る。それでもそれほどガッカリ思わないのは、どんなジャンルであれ、日本人ってこういう物語に弱いってことなんだろうなぁ。そういうのもアリ・・・かなぁって思ってるんだと思う。心のどこかで。