新野 剛志『FLY』

FLY

自分のせいで恋人を目の前で殺されてしまった少年。父親の暴力に耐えかね殺意を抱く少女。そして二人を繋ぐ逃亡中の殺人犯。15年の歳月の果てに判明する衝撃の真相！

とりあえず長すぎ。15年の歳月の果てに、とありますが15年前と15年後の現在が描かれているだけで途中はすっとばされてるもんで、ちっとも歳月の重みが感じられない。特に、恋人を殺された日から少年が心に抱き続ける闇や狂気性みたいなものが伝わらない。これは、その少年の視点ではなく、偶然にも無理やり関わることになった第三者の視点で描かれているからなんだけど、もうちょっと掘り下げてもいいんじゃないかなぁと思った。他の主要人物もみんな背景が見えない。それぞれ抱えてるものがあるんだけど、全然迫ってこない。あっそ・・・てな感じ。
とにかく無駄な記述と無駄な登場人物が多い。そんなもんにページ費やすぐらいなら他に書くこといっぱいあるだろ。衝撃の真相も全然衝撃じゃない。予想通り。びっくりしたくて読んでるわけじゃないから、予想通りだったとしても別にいいんですよ。それまでの道のりで感情移入できたりだとか、なんらかの思いを持てればたとえ予想通りのショボいラストだったとしても、それなりに読んだぞ、と満足するから。当然人によって感想は違うし、受ける印象はいろいろだろうけど、私はこの本からは登場人物に対する愛が感じられなかった。ストーリー（設定）は面白いと思うだけにほんと残念。