鳥飼 否宇『太陽と戦慄』

太陽と戦慄 (ミステリ・フロンティア)

太陽と戦慄 (ミステリ・フロンティア)

生い立ちや家庭環境、素行に問題アリのストリート・キッズたちが導師を名乗る男に拾われ共同生活。危険思想の持ち主である導師は、彼らにロックバンド【ディシーヴァーズ】を結成させ、己の作った曲を演奏させ、ロックを媒体にしての布教を目指す。彼らが初めてのライブを終えた時、惨劇が起こった。そして10年後。列車爆破脱線事故、百貨店炎上、ホテル爆破といった大規模な事件が勃発する。惨劇の現場に残されたかつてのバンドメンバーの死体と謎の動物の玩具たち。犯人は誰か?動物の玩具にはどんな意味があるのか?


うぉー、なんかカッコいいですよ、これ。全編に流れる雰囲気はノイズ系。あと不健康。ドロ〜ンドヨ〜ンといった感じ。新興宗教、洗脳、狂信、そういうキーワードな物語なので、読んでいて楽しい気分ではない。でも最初に起こる事件は密室で、10年後に起こる事件は連続モノで、限られた登場人物の中に犯人がいるという犯人あて、それにプラスして犯行現場に残された謎の玩具という謎ときもあったりして、本格好きにはたまらないかも。ちなみに私は本格としてよりも不健康な雰囲気、アンダーグラウンドな空気に魅せられてしまったので、本格としては全く読めてません。最後に明かされる犯人や謎の解明を読んでもふ〜ん・・・としか思わなかったぐらい(特に玩具の意味なんてちんぷんかんぷんですよ)。でも面白かったの。推理小説の中で音楽の薀蓄とかバンドという関係を描いた作品って結構あると思うんだけど、感覚として合わないというか、なんか古っ!とか思ってしまったりするのですが、これは好き。ニルヴァーナばんざ〜い!フランク・ザッパばんざ〜い!
あと太陽と戦慄というタイトル(超かっこいい)からdipが浮かんだ。山路って苗字も出てくるし。読みながらずっと流れてました、dipが。音楽と本格のコラボといったら言い過ぎかな〜。でもそんな感じ。