法月 綸太郎『生首に聞いてみろ』

生首に聞いてみろ

生首に聞いてみろ

買う気マンマンでよく行く(週3)書店へ出かけたところ何故だか見つかりません。ちらほらと読んだらしき人の感想も目にするので発行されてることは確かなはず。勇気を振り絞ってかわいい店員さんに
「あ、あのー入荷してるかどうか調べてもらいたいのですけど」
「はい。どのような本をお探しですか?」
法月綸太郎という作家の、な、な、生首に聞いてみろという本なんですけども(だんだんと語尾が小さくなる)」
「生首ですか?」
「はい。生首に聞いてみろです(超ちっこい声で)」
待つこと5分。かわいい店員さんをはじめ3人がかりで棚を見にいったり、書類をひっくりかえしたり。その間「なまくび、なまくび・・・」とつぶやく店員さんたち。なんかとても恥ずかしいんですけど。
「お待たせしました。売り切れのようです」
売り切れー!?のりりん売り切れ!?1800円(税別)もするのにー!?
とまぁびっくりするほど売れている(らしい)法月綸太郎久々の長編でございます。装丁怖いよぅ。お好みですけどね、これはちょっと怖いよ。重めの題材なわりにはタッチが軽めというか、非常に読みやすい。無駄な装飾一切なくて、シャープだなと思った。多分、綸太郎がうじうじ悩んだりしてないせいで、そう思ったのだろう。これ前作からどのくらい時間が経過した話なんですかね?(前作読み直してないもんで)綸太郎が淡白というか情熱不足というか歳とったというか、わざわざ事件をこねくりまわすねちっこさがなくなったな、と感じた。文中にも「綸太郎が今よりもっと若くて、自分のことを見限っていなければ、その時恋に落ちていたかもしれない。」という記述があったり、なんだかちょっと切ない。徹夜明けの30男、とあるから30歳か31歳ぐらいだろうに自分を見限るなんて早すぎる。前作と今作の間に何があったのだろうか。悩むことを放棄し、諦めてしまったのだろうか・・・。それでいて女性の前では身だしなみに気を使いまくる綸太郎。ああ、大好きです。
で、内容。正直、小粒だなーといった印象。事件が起こる範囲が狭すぎるんだよな。結局は家族間の愛憎劇、醜聞でしかないわけで、首を切るという猟奇性とのギャップに馴染めなかった。途中で考えることを放棄してしまった自分がいて、最後の綸太郎の説明を読んでも「・・・・・・・・・ふ〜ん・・・・・・・・・」てな感じで、カタルシスっていうんですか?そっかー、そうだったのかー!と瞠目することは、それほどでもなかった。事件そのものに興味を持てなかったからかなぁ。あんまり芳しくない感想ですが、でもでものりりんはやっぱりやってくれるのですよ。エピローグが素晴らしいのです。ずっと引っかかってたことが一番最後で明らかになり、そしてそれは哀しくて苦しい結末なのです。私は基本的にエピローグ(後日譚)いらない派なのですが、これは効果としても余韻としても完璧だと思いました。まだまだいけますよ、のりりん