- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/09
- メディア: 単行本
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「あ、あのー入荷してるかどうか調べてもらいたいのですけど」
「はい。どのような本をお探しですか?」
「法月綸太郎という作家の、な、な、生首に聞いてみろという本なんですけども(だんだんと語尾が小さくなる)」
「生首ですか?」
「はい。生首に聞いてみろです(超ちっこい声で)」
待つこと5分。かわいい店員さんをはじめ3人がかりで棚を見にいったり、書類をひっくりかえしたり。その間「なまくび、なまくび・・・」とつぶやく店員さんたち。なんかとても恥ずかしいんですけど。
「お待たせしました。売り切れのようです」
売り切れー!?のりりん売り切れ!?1800円(税別)もするのにー!?
とまぁびっくりするほど売れている(らしい)法月綸太郎久々の長編でございます。装丁怖いよぅ。お好みですけどね、これはちょっと怖いよ。重めの題材なわりにはタッチが軽めというか、非常に読みやすい。無駄な装飾一切なくて、シャープだなと思った。多分、綸太郎がうじうじ悩んだりしてないせいで、そう思ったのだろう。これ前作からどのくらい時間が経過した話なんですかね?(前作読み直してないもんで)綸太郎が淡白というか情熱不足というか歳とったというか、わざわざ事件をこねくりまわすねちっこさがなくなったな、と感じた。文中にも「綸太郎が今よりもっと若くて、自分のことを見限っていなければ、その時恋に落ちていたかもしれない。」という記述があったり、なんだかちょっと切ない。徹夜明けの30男、とあるから30歳か31歳ぐらいだろうに自分を見限るなんて早すぎる。前作と今作の間に何があったのだろうか。悩むことを放棄し、諦めてしまったのだろうか・・・。それでいて女性の前では身だしなみに気を使いまくる綸太郎。ああ、大好きです。
で、内容。正直、小粒だなーといった印象。事件が起こる範囲が狭すぎるんだよな。結局は家族間の愛憎劇、醜聞でしかないわけで、首を切るという猟奇性とのギャップに馴染めなかった。途中で考えることを放棄してしまった自分がいて、最後の綸太郎の説明を読んでも「・・・・・・・・・ふ〜ん・・・・・・・・・」てな感じで、カタルシスっていうんですか?そっかー、そうだったのかー!と瞠目することは、それほどでもなかった。事件そのものに興味を持てなかったからかなぁ。あんまり芳しくない感想ですが、でもでものりりんはやっぱりやってくれるのですよ。エピローグが素晴らしいのです。ずっと引っかかってたことが一番最後で明らかになり、そしてそれは哀しくて苦しい結末なのです。私は基本的にエピローグ(後日譚)いらない派なのですが、これは効果としても余韻としても完璧だと思いました。まだまだいけますよ、のりりん。