荻原 浩『メリーゴーランド』

メリーゴーランド

メリーゴーランド

東京のそこそこ一流の会社で働いていた男が「なんとなく」Uターン就職。それもたまたま公務員試験に通ったからと市役所勤め。嫁もみつかり二人の子供にも恵まれ、仕事は暇なもののそこそこ幸せな人生を送っていると思っていたら、いつのまにやら超赤字テーマパークを立て直す切り札にされていた!地方都市独特の村興しや権力闘争に翻弄されながらも、気がつけばその気になってる自分。くたくたになり、妻との会話もなくなり、子供とスキンシップなんてできっこないっなんて状態に陥りつつも、売れない劇団や暴走族をも巻き込んで成功させるぞゴールデンウイークイベントを! そんなお話。すごくいい距離感な物語だと思った。底辺の部分は今日本のあちこちに存在している問題を描いているんだけど、その上に乗っかる赤字テーマパークでのイベント開催というメインアイテムはとことんフィクションであり、メルヘンであり荒唐無稽(いい意味で)。だから笑える問題提起小説になってる。行政の偉い人たちのボンクラっぷりはデフォルメされてるけど、実際これに近いんだろうなぁと思うし、楽な仕事をしてたら、どんなに使命感を持ってる人もそのうちぬるま湯につかってしまうんだろうなーと思う。分かりきってることだけに改めて大切な読書時間を使ってまでそんなものに触れたくないけど、この本はその上の部分がすごく暖かくて、アホらしくて、ちょっともの哀しくてと魅力的なので、気分は結構悪くない(結構って頻繁に使う自分に気がついた・・・)。しかも、めでたしめでたしな結末ではなく、シュール。誰が上に立ったとしても、根本的な問題を解決するのは難しいってことなんだよな。
地方都市のテーマパークというと、戸梶圭太の『闇の楽園』が思い浮かぶのですけど、地方自治体アホ比べとして読み比べてみても面白いかもしれません。全然違うけど・・・。
追記:そうそう、主人公の子供が何度か「デカレンジャー・レッドだ!」とか言うんだけど、そこは「デカレッド」だろうと思った。