高田 侑『裂けた瞳』

裂けた瞳

裂けた瞳

第4回ホラーサスペンス大賞受賞作。帯が桐野夏生唯川恵のコメント。お二方とも筆力を褒めてらっしゃいます。オカルトとサイコホラーを足しましたって感じの作品。主人公の中年男は幼い頃から自分の近くにいる人の感情が爆発した時、その人の見た光景を否応なしに自分も見てしまう(脳裏に浮かんでしまう)という発作体質の持ち主。職場の部下と不倫中。ある時、取引先の町工場社長がプレスマシンに挟まれて圧死した瞬間の映像をキャッチしてしまう。最後に見えたものは、若い男の後ろ姿と携帯ストラップ。そして現場近くにはカラスの惨殺死体が。それなりに平和であったはずの家庭に訪れる数々の不快な出来事。悪夢は不倫を清算することで終わるはずだったのに・・・。 そんな感じのお話です。確かにまとまってるとは思う。でもなんとなく詰め込みすぎな気がしました。最初に書いたように、まず主人公の体質が超能力的だし、テレパシーだの憑依だのも出てくる。で、主人公の家庭を追い詰める男はものすごいサイコでしかも少年法に守られる14歳。で、不倫なんかしちゃってるからエロシーンなんかもあったりするし、ついでに家族愛、親子愛なんかも描いちゃったりして。主人公さんも大変ですねーなんて思っちゃった。それぞれの描写はくどすぎることもなく、といって浅いわけでもないのでバランスはとれていると思うけどでもちょっと疲れた。主人公の周りの人間も若干多め。何人かは省いても何の問題もないはず。多分書きたいことがいっぱいある人なんだろう。応募作だから思う存分詰め込んじゃったのだろう。好みとしては、サイコ要素がもっと強かったらよかったな。動物虐待は反対ですけど。これからいろんなモノが書けそうな人だなぁと思う。これが筆力ってやつなのか。あ、あと残念だなーと思うのはタイトルが地味だな。瞳つながりなんだろうけど、ピンとこない。