伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

最初はなんつータイトルだよ!と思いました。あらすじとして、「引越し早々美青年が広辞苑を盗むために、一緒に本屋を襲おうと誘ってきた!」とかそういう情報だけ仕入れていたので、それとどう絡むのかしら?と。
あたし的には、今年一番の収穫がこの伊坂幸太郎なのです。なんとなくおっさんくさい名前じゃないですか。だからデビュー作から手には取ってみたものの、カカシ〜?なんか興味ねーとか思ってまして、敬遠していた訳です。が、ががが、読んでびっくり!やべー超面白いし〜!超スキ〜!とギャルばりにもだえてしまい、特に2作目の『ラッシュライフ』なんてもう、感動して読み終わった本を抱きしめてしまいましたよ。というわけで、大好きな大好きな伊坂幸太郎なのです。
今作も相変わらず素敵な空気感です。物語の構成で一番核になるべきネタっていうのかな、「それ」はかなり早い段階で分ってしまったのですが、それだけじゃないんですよ。語り手の成長物語として読んでもこれまたいいのです。そしてそしてラストの「ボブディランはまだ鳴っているんだろうか」って一言と犬で、なんかもーこみあげてくるというか、めちゃめちゃ余韻が残るんですよ。伊坂作品の中では『重力ピエロ』に一番近い雰囲気があると思うのですが、ピエロが一番好きって人にはとても好まれるんじゃないかな。タイトルも、読み終わってみるとこれしかないかなって感じ。伊坂が嫌いな人はこじゃれすぎてるとかスカしてるとか言いますが、会話とか端々に滲む気取りっぷりは置いておいても、このタイトルセンスはいいんじゃない?
そして、伊坂作品には欠かせない犬もいっぱい出てきますよ。あ、猫好きにはちょっと厳しいかも。そこじゃない!ってとこで感情移入しそう・・・。もちろんあたしも憤慨しましたよ!むかつきましたよ!フンガー!って言いましたよ。
というわけで、この作品に限らず伊坂作品に触れたことがない方は来年ぜひぜひ読んでみてほしいと思います。