中山 七里『死にゆく者の祈り』

死にゆく者の祈り

死にゆく者の祈り

  • 作者:中山 七里
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/09/19
  • メディア: 単行本

教誨師として囚人たちに仏道と説く顕真は、集合教誨の場で一人の死刑囚に目を留めた。それは大学で同じサークルに属し、自分の命を救ってくれた友人であった。見ず知らずのカップルの命を奪い死刑宣告を受けた囚人とかつての友人が結びつかない顕真は、友人を救うために、そして自らを納得させるために、教誨師としての職分を逸脱していることを承知の上で事件について調べようとする。

言ってしまえば僧侶と刑事コンビが執行間近の死刑囚を救うべくはみだしまくる話・・・なのですが、主人公を筆頭に登場人物たちが抱えているもの、それはやはり「業」ということになるのでしょうが、それがあまりにも深くて読んでいる最中ずっと息苦しかった。主人公が「真実」を求めた結果、真犯人(これがまさかの人物でびっくりしたけど、でもちゃんと伏線は張られてたんでなるほど納得)を含めそれぞれにとっての『救済』が得られた(であろう)という結末なので読後感は思いのほか清々しいものでしたが(あ、でも被害者女性の親にとってはこの真実は果たしてどうなのだろうか。憎しみだけで生き続けてきたというのに、憎む相手が違ってたというのはさらなる地獄でしかないよなぁ・・・)、読み終えて本を閉じた瞬間何とも言えないため息が出てしまった。


中山さんちょっと執筆ペース早すぎやしませんかね?とか思ってましたが、これだけの作品を読まされてしまうと質と量が並び立つこともあるんだなと言わざるを得ません。この内容でこの読みやすさ(あ!名前こそでませんが御子柴がカメオ出演してます!)ってほんとすごい。