川瀬 七緒『賞金稼ぎスリーサム!』

賞金稼ぎスリーサム!

賞金稼ぎスリーサム!

いやあ、川瀬さんまたものすごいキャラ小説出してきたなあ!。
母親の介護を理由に仕事を辞めた元刑事の元へ火災調査の依頼が持ち込まれる。話を持ってきたのは大企業の顧問弁護士で、なぜ元刑事のところにそんな話が持ち込まれたかと言えば、元刑事がかつて公務執行妨害で逮捕した大企業の創業者一族の息子で「警察マニア」の男の意図によるもので、二人が火災現場に赴くとそこには白いワンピース姿の若い女の姿があった。という始まりで、表紙絵の三人がトリオの賞金稼ぎを結成する物語です。

元刑事が敏腕なのは当然として、警察マニアのボンボン息子は「イケメン」で「金持ち」で「誰の懐にもスルっと入りこめるコミュ力の持ち主」で、白いワンピースの女は「日本中の役所が依頼をしたがってる伝説のハンター」で「コミュ障」で「恋する乙女」と盛りに盛ったキャラ設定なんですが、これがまあ上手い。淳太郎(警察マニア)も一花(ハンター)も個性強すぎで最初はどちらかと言えば辟易する感じでしたが、薮下(元刑事)という常識的な人物がいるのでバランスがいいうえに暴走しそうでしないんです。高級ホテルのような内装のシボレーのキャンピングカーが基地だとか、伝説のハンターと呼ばれる若い女が狩猟の知識で事件の真相に迫るとか「ありえねー」要素がありまくりなのに、トンチキとは全く感じない。そのありえない設定を常識の範囲内で利用しつつ活かしつつ、ごくごく普通にまっとうに一歩一歩捜査が進んでいく。

・・・んだけど、なぜそれが国際指名手配のテロリストの話になるんですかー!。終盤のアクロバット展開にぽっかーーーーーん。

これシリーズ化すると思うのですが(ていうかしてくださいお願いします!)、この知識と財力と情報力と行動力を兼ね備えたトリオの『敵』として、年齢・性別を含めこれだけあらゆる意味で『強い』存在を置くとかこの先が楽しみすぎるでしょ。
いくらこのトリオをもってしてもガチもんのテロリストが相手じゃ太刀打ちできないだろうと普通ならなるところなんですが、そこはテロリストが病を患っているらしいというハンデがあるし、それによりタイムリミットもあるだろうし、ゆえに「ハンター」である一花をこのまま放置はしないだろうと、設定に隙がない。
薮下の母親のことや介護士との大人の恋の行方、一花の恋愛含めこれからの成長といった枝も豊富だし(淳太郎だけはよくわからん)、これは早く続きが読みたい!。


・・・ところで表紙にいる柴犬ちゃんはなんなんですかね?。作中に重要な役割を果たすわんこが登場しますが「白くて大きな犬」なので柴犬ではないはずだけど、柴犬には無条件で食いつく私なのでそこははっきりしてもらいたい。