沢村 浩輔『時喰監獄』

時喰監獄

時喰監獄

そんなジャンルがあるのかわかりませんが、突如湧き出てきた「プリズンもの」が読みたい!という欲求に突き動かされ書店に行ったらこのタイトルが目に入り、さらに「時代は明治」「舞台は野生の狼が生息する北海道の原生林のど真ん中に建てられた監獄」「三度目の脱獄に挑む不死身の男」「浮世離れした美形の探偵」「ある日突然現れた記憶喪失の男」と好みの要素がてんこ盛り!ってんでワックワクで読み始めましたが、予想外のトンデモ設定であった(笑)。タイトルの意味を考えれば察することはできたでしょうが、なにも考えずに読み始めたもんで突如〇〇〇〇〇〇〇なんてアイテムが文字通り「現れて」ポカーン。

でもその設定にはちゃんと意味があって、物語の中枢を担うもので、読み終わってみればなるほど超納得!なのです。確かにトンデモなんだけど(そこは譲らない)、決してトンチキじゃないんです。このトンデモ設定を軸に全てのパーツが嵌り全体の「画」が見えた瞬間、謎の感動に包まれましたから!。『90ページで世界はひっくり返る』と帯にデカデカ書かれている通り、確かにひっくり返った!。
・・・でも「90ページ」って結構あるよね(笑)。全体の4分の1ぐらいの割合で、そりゃひっくり返るよねとは思ったけど(笑)。

「不死身の男」「美形の探偵」「記憶喪失の男」はどれも大層魅力的なのですが、この作品の「主人公」はこの三人ではないのです。この三人に比べれば“普通”の男が主人公となり、三人を繋ぐ働きをする。時代を超えてのこの相関図がとてもよかった。悪人・悪党の存在感も良かったし、ラストシーンまでばっちり決まっててこれはアタリ!!でした。面白かったー!。