『風が強く吹いている』

神童の姿が翌日のカケルの糧になるとわかっていても、それでもさすがに状態がひどすぎるというか、体調が悪い描写が濃すぎたもんで、いや「10人で」箱根に挑むことに意義があるというか、それこそが作品の肝であることは重々理解してるけど、ユキは選手じゃん?明日走るわけじゃん?神童がこの状態でも走らなきゃならないのは10人しか「選手」がいないからだけど、この状態の神童の世話をするのは選手であるユキでなくとも構わないんじゃないの?給水を「寛政大学陸上部」の短距離選手に担ってもらったように、神童の付き添いも陸上部員に頼むことはできなかったの?神童の風邪がユキにうつったらどうするつもりなの??ていうか神童とユキ同室なの!??と、原作既読で映画版も見て舞台版が死ぬほど大好きであるにも関わらずそんなことを冷静に思うわたしがいましたが、それでも泣いた。だばだば泣いた。

もうね、脳内お花畑のジョージが泣き崩れてるところからダバーですわ。あんな一瞬手袋越しに触れただけで「走ってきた俺より熱い」とわかってしまったジョージのショックと後悔を想像したらそりゃ泣くよ。泣いちゃうよ。

そしてカーチャン。わたし箱根に関わらずスポーツを見ていて勝者よりも敗者のことを思いがちなんですよね。1試合4本ホームランを打った打者ではなくホームラン打たれまくった投手の、それも親のことを思っちゃうんですよ。この子のお母さん今すごく辛いんだろうなーって。だもんで神童のお母さんが泣いてるのに決壊した。泣きながら手を合わせてテレビ画面を見られないお母さんを思うと神童が倒れて暗転するのとかほんともうやめて・・・って感じだった。

神童の心の声。素晴らしい内山昂輝くんの演技だったなぁ。いつものトーンとは全然違って、「誰か」に話をするのではない神童の声はこんな声なんだな。別に普段の声を作ってるわけじゃないだろうけど、それでもやっぱり“神童”であろうとしていて、あろうとしているところはあって、ずっとそうやって生きてきて、だからこんな状態でも走り続けているんだろうな・・・ということが「声」でわかる。わかった。
キャスティングが発表されたとき、神童を演じるのが内山くんだと知ってとても驚いたけど、このシーンのための内山昂輝だったんだなと、今はとても納得してます。


神童の描写が思った以上にハードだったことと、予告で走るユキがどえらい男前だったもんで、その間にあったハイジさんとカケルの会話、原作では重要な要素となるものがちょっとした思い出話のような感じで終わってしまったことで、ハイジさんの話(走り)の濃度が薄まってしまいそうでちょっと不安はあるけれど、予告のユキは超絶カッコイイ(二度言う)。