芦沢 央『火のないところに煙は』

火のないところに煙は

火のないところに煙は

お名前に見覚えがあるので著作を読んだことがあると思ったのですが、初めての作家さんでした。
とある作家が「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか?」という依頼を受ける。これまでに怪談を書いたことなどないというのになぜそんな依頼が自分のことろにきたのかと不思議に思う一方で、作家には誰にも言わずに抱え続ける一件があり、それは怪談のようであり、しかも神楽坂での話であった・・・。という始まりで、作家が見聞きした話をルポルタージュのような形で書いていく、というスタイルで、「小説新潮」に掲載されたという現実もまんま要素の1つとなってます。でもこの“作家”が著者本人だという記述はありません。
「怪談を書きませんか?」という依頼がはじまりなのでどれも怪談っぽさはありますが、各話とも「謎」があってそれに対する「解」があるので、怪談調のミステリという感じ。謎の部分が怪談仕立てというだけで、原因・理由が解ってみればなるほどねとなる。でもそうなると最初の話だけがやや消化不良というか、ぼんやりとした終わり方であることが気になってくるわけで・・・というのが最後の1話で「そういうことかよ・・・」となるのです。現実と小説の境目が曖昧なことも含め全体の構成がよく考えられていて、かゆいところに手が届く気持ちよさがありました。何の気なしに手に取った作品ですが、これはアタリです!。