長岡 弘樹『道具箱はささやく』

道具箱はささやく

道具箱はささやく

たった20枚の超短編(と帯に書かれていますが、20枚縛りとかではないようです)が18篇収められた作品集です。
どれもキレッキレ。後味のいいものも悪いもののとにかくもうキレッキレです。
タイトルがあって、所謂“前フリ”があって、そしてオチがある。パターン化という表現は相応しくないかもしれませんがそれはもう解ってるんです。前フリだと思うものは確実に前フリで、それがオチに繋がることは解りきってる。それでも驚く。それでも震える。
いい話とエグい話が混在しているのですが(読み始めて暫くはどちらに向かっているのか分からないものが結構あってそれがまた凄い)、どちらもほらほら「いい話でしょう?」「エグイでしょう?」というドヤ感がないんだよな。どんな話でもそこにあるのは冷静さと緻密さ。装飾や誘導などは一切ないのです。
感心や安堵や哀しみや切なさ・・・1篇ごとにその余韻を味わいながらもすべて読み終わるとこれだけの質をあたりまえに(思える)揃えてしまえるあまりの巧さに慄かずにはいられない。