雫井 脩介『引き抜き屋』

引き抜き屋(1)鹿子小穂の冒険

引き抜き屋(1)鹿子小穂の冒険

引き抜き屋(2)鹿子小穂の帰還

引き抜き屋(2)鹿子小穂の帰還

父親が創業者であるアウトドア用品メーカーで役員を務めていたものの、ヘッドハンティングで入社した常務と対立し退社を求められた30歳の娘は流されるがままヘッドハンターとして働くことに・・・という始まりで、主人公の鹿子小穂が様々な業種の依頼者(クライアント)と候補者(キャンディデイト)、そしてヘッドハンターと出会い、学び成長していく物語です。
とはいえ通称「鹿子ちゃん」がヘッドハント業界で一人前のヘッドハンターになる話というわけではないのでお仕事モノではありません。そういう要素もありはするけどそれよりも主人公(ヘッドハンター)を通して会社を動かすトップに属する人間たちの在り方というか生き様というか、そういうものが描かれていて、求める者と求められる者をヘッドハンターが繋ぐ、その『縁』の物語。
章ごとに異なる案件を描く連作形式で、クライアントの業種も外部から人を入れようとする理由も事情も違うので章単体でも楽しめるし、依頼に沿って人材を見つけて紹介してはいおしまいというわけではなく主人公がキャンディデイトとして抱える人物たちがどこでどう使われるのか(どんな会社とマッチするのか)という楽しみがある。一方主人公自身の話(父の会社のこと)としてはヘッドハンターになるまでの序章で描かれるだけで以降はほとんど描かれず、終盤になって一気にそれが動くのですが、ヘッドハンターとして働いてきた主人公の経験であり人脈が父の会社を救い、そしてこういう形で支えることになるというこの結末、この構成には唸らされました。パズルのピースがバシっと嵌った感があって、スカっとする読後感でした。