樋口 有介『あなたの隣にいる孤独』

あなたの隣にいる孤独

あなたの隣にいる孤独

なんだか不思議な話だった。15歳の主人公は戸籍がなく学校に通ったことがない。それは母親が言う「あの人」から逃げているからで、関東近郊の街を転々としながら母と二人で暮らし今は川越に住んでいる。そんなある日母親から「あの人」に見つかってしまったと連絡が入り、途方に暮れた主人公は行きつけのリサイクルショップを営む老人とその甥の男の世話になることに。という物語で、老人と甥の協力で主人公がなぜ現在のような境遇に置かれているのかは早々に判明し、そこには結構な事情があるんだけど、でもそこで少女は何をするというわけでもなく、老人と甥との暮らしを続けるんですよね。そうすることを少女自身が選んだ。つまりこれは戸籍もなく文字通り「居場所のない」主人公がそれを見つける物語なんだと思ったんだけど、そこで現実が向こうからやってきてしまうのです。で、主人公は「どうする?」ってところで終わってしまうんですよ。でもその先を読者に委ねているという感じではないの。いくつかの選択肢があるようには思えるけど、あるだけ、なんだよ。これをどう解釈すればいいのだろうか。