西尾 維新『ヴェールドマン仮説』

ヴェールドマン仮説

ヴェールドマン仮説

どんな話なのか、どんなジャンルなのかすらまったく予想ができないこのタイトルの意味というか、なんのことなのか、それが作中で語られた瞬間が最大の驚きでした。

で、その中身とは祖父は推理小説作家で祖母は法医学者、父は検事で母は弁護士、兄は刑事で姉はニュースキャスターで弟は探偵役者で妹はVR探偵という「ホームズ一家」のなかで、高校を中退し無職の「なにものでもない」「なにもない」、でもそのことに「コンプレックスすらない」次男(五人きょうだいの真ん中)が家事をこなしながら連続殺人事件についての『仮説』を立証すべく立ち回る・・・という物語でありましたが、この盛りすぎの極みのような家族たちはそれぞれちょっとしたアドバイスでありアシストをするだけで、視点であるなにものでもない次男が自分のできる範囲で(できる範囲ならば身分の詐称ぐらいはあたりまえにやる)事件を調べるという捻りのない話で、事件自体も特殊能力特殊設定などない至ってまともな事件だし、それはそれでというかそこがというか面白く読めたので、ここからシリーズ化するのだとしたらこの「普通さ」がどうなっていくのか興味があります。